Иркутск:イルクーツク
Иркутск:イルクーツク
2011年6月の旅から
街歩きの記憶が、日常の隙間にふっと横切ったりする。季節も時間も違うのに...。
はて、どうしたはずみで甦ったのか...。
アンガラ川の岸辺に立つのは、2010年に続いて2度目。
広い川の向こう岸にイルクーツク駅の駅舎と列車が見える。
今回も午前中だけ、半日のガイドをお願いした。案内役はアナスターシアさん。言語大学の学生さんだ。日本の金沢大学に1年間留学したことがあるという、色の白いかわいいお嬢さん。ドライバーは大柄なアレクサンドルさん。
1年前は雨振りのイルクーツク。今日は晴天。
街の印象がお天気でずいぶん変わる、あたりまえだけど...。
街の中心にこんな豊かな緑がある。
アスファルトに散った白い点々は、ポプラの綿毛。6月のロシアは綿毛の季節。
ハバロフスクもこの街も、のびのびと繁った街路樹が美しかった。
初夏の光の中で、赤いドレスに白い帽子と靴のおばあさん。
物語が生まれそうな昼下がり。
頭にも顔にも洋服にも...雪みたいに綿毛が舞っている。
キーロフ広場から見る建物が新しく感じる。広場も庭園も歴史が浅い感じがする。
アナスターシアさんに聞いてみる。イルクーツク市制350年という。日本なら江戸時代か。若い街だ。
ロシアの昼食は午後1時頃から。アナスターシアさんにおいしいレストランを教えてもらった。
カール・マルクス通りの「スニジェンカ」。
彼女を昼食に誘ったけれど、午後2時に授業が始まるから、と笑顔で挨拶をして別れた。
家族連れが二組。奥に年配のご夫婦。静かなレストラン。
ビールはチェコ製であった。初夏の街歩きで渇いたのどに...いいなあ。
おいしいんだろうなあ。
朝から3時間の街歩きで見たものは、
キーロフ広場の噴水。満開のリラの花、白、薄桃色。
クレストヴォズドヴィジェンスカヤという長い名前の教会で、朝のお祈りの人たち。
スパースカヤ教会ではイコンとコサックの旗。
ズナメンスキー修道院内に、スカーフで髪を隠したお婆さんたち、観光客。
礼拝堂の隅に備えてあったスカーフを、私も一枚お借りして髪を隠す。
ここにもたくさんのイコン。
木造の城塞オストログ。クレムリンにはお爺さんたちがいっぱい。
アナスターシアさんの話の続き:ロシアの政党は、
イエディナヤロシア・コミニスティスカヤ・イデナ ロシア・農民党・以上。
アナスターシアさんが生まれたのは、ブラーツクという街。シベリアには「ツク」という名前が多い。
イルクーツクの名前は、イルクート:流れが速いの意味だそう。
流れが速いのは、このアンガラ川のことだろうと思った。
三日目。今日も夕方の列車までぶらぶらと街歩き。
アンガラ川に沿って広い公園が続いている。小さな子供を連れた若い夫婦、年配のふたり連れ、
賑やかに広がって歩く若い人の群れ。
白い帽子の女の子。
坊やの帽子は空と同じ色。
さくらんぼ...かな?
その先を歩く女の子たちの、明るい夏のワンピース。
おかあさんは川に降りていった。何しに行ったか、不安そうな男の子。
日陰を選んで歩く。みんなすっかり夏服。
アナスターシアさんの話だと、ここ1週間ほど暑さが厳しく 街の人たちは参っているそうだ。
大人はみんな肥って大きい。子供はどの子も小さくて細いなあ。
木造の住宅は、窓枠と軒下に凝った飾りをつけている。窓と軒下から悪魔が入らないように...。
前の旅の時に、ここイルクーツクで案内してくれたナターリヤさんの言葉を想い出した。
「悪魔は窓や軒下から忍び込んでくる。魔除けのために装飾するのだ」...と。
川沿いの大きな通りからちょっと入った小道(ガガーリン通り)、
こじんまりとした静かな佇まいのレストラン。
ちょうど昼時。ドアを開けると小さなホールを隔てて、奥にクロスをかけたテーブルが見えた。
客がひとりもいない。あ...ロシアでは昼食は午後1時頃からだったことを忘れていた。
私は、いつでもどこでもとりあえずこれ、生野菜。
ツレアイは、いつでもどこでもとりあえず、ビール。そのあとワイン。
彼はビールの銘柄もワインも覚えなし。
ペリメニは、ロシア風のラビオリ。
ディル(ロシアでよく使われている)と、スメタナ(サワークリーム)を乗せた、ロシア版ラビオリ。
私はディルの香りが大好きで、庭にも種を蒔いて料理によく使う。ほっとするウチの香り...。
ベーコンを巻いたローストチキン。韓国風ピリ辛タレ付き。えっ、なんで韓国ふう?
でも、意外にも合うお味なり。
朝も昼もクレープを食べた。
デザートにかかる頃になって、テーブルは満席になっていた。
やはり午後1時過ぎに昼食が始まるようだ。
ポプラの林に囲まれているホテルのロビーには、風に運ばれてきた綿毛がふわふわ舞っている。
人が通るたびに、広いロビーがふんわりと揺れて見える。
大きなソファに掛けてぼんやり見ていると、雲の上に漂うような夢に引き込まれていく。
夕方にはイルクーツク駅に行く。
モスクワまで3泊4日の列車の旅が始まる。